発端

四月初めから約二ヶ月のあいだ、ソニーの新発売HX100Vを買うか買わないか、買うとすればいつ買うかで、だいぶ頭を悩ませていた。

その機械は、2011.0408発売で、発売前から前評判が良かった。価格コムのなかで、競合機種との比較が賑やかだった。たとえば、発売前4/05の価格コムで、私はキャノン・ニコン・冨士・ソニー四機種の横断比較をしている。

そもそもなぜ30倍の高倍率ズームコンデジが欲しいのかというと、それはズバリ「タヒチ用」である。つまり「旅カメラ」なのだ。

本来なら、タヒチには一眼レフを持って行きたい。ポケットに入るキャノンS90は良いカメラには違いないが、なにぶん望遠が足りない。前回はキャノンのSX20を持っていき、良いシーンがいくつか撮れた。後でカメラクラブの作品展にも出品した。

「二つのカメラ」

今でも忘れないのは、六年前の2005年11月、石垣に行くときに、やはり猛烈に迷ったことである。一つは冨士のS5200、もう一つはキャノンのSX2だった。
2005.1122 本稿83「二つのカメラ」参照)

 

今読み返してみると、当時はわずか10倍ズームだったのだ。S5200は良いカメラだった。そのときに石垣島西岸の名蔵湾で撮った波打ち際のマングローブの赤ちゃんの写真は、自分の写真歴のなかで最高の作品の一つと思っている。

スタイルが良く、デザインが良く、手触りがよく、軽かった。但し、色はややシャーベット調でさっぱりとしていた。散々迷った挙句これを手放して、キャノンのSX2を残したのは、カメラとしての練度と、色、重厚さをとったからである。いまでも未練が残っている。しぶとい。

その後、SX3→SX20と買い替えてきたが、昨年稼働率の低さからこれを他人に譲り、一眼レフと、S90という万能小型カメラの二台体制にした。

このGW、奄美に行くときも、一眼レフは邪魔だし、S90で勝負した。しかし、タヒチとなると、過去の体験からしても、望遠が必要だ。ということで、今回のソニーの100Vの話につながる。

えんえん続く品切れ

 

毎日のように、価格コムの「100V」の欄を覗いて、皆さんの評価を見ていたが、今回は(地震・津波の影響でもあったのか)品切れが多く、たしかに一部には入手した人もいるのだが、だいたい入手までに一ヶ月待ちのようだ。ヨドカメのHPを見ても、各店「展示あり・在庫なし」がずらりと並んで異様だ。

いつ買うかはけっこう大事で、早く買うと、まだ品質が安定しないうちに買うことになる。いつかも書いたように「ソニーの製品は最初の5000台は買うな」である。タヒチはまだまだ半年先だし、買うとしても七月ごろでいいのでは?
と自分を抑えていた。

ところが、五月も末になると、さしもの品薄もようやく終息、出回り始めた模様だ。そんなとき、たまたま6/01、神田に用事が出来たので、(よし、これはチャンスだ)と急遽購入を決め、用事後、即秋葉原へ飛んでいった。(製造番号13688)

マイツール型とエクセル型

 

翌々日の6/3~5は、大阪・箕面で「なにわMG」だった。研究のために、買ったばかりのマシンをもって、出張する。

箕面観光ホテルのすぐ下は、紅葉で有名な「箕面の滝」までの遊歩道。季節を問わず、毎朝散歩、歩行、ジョギングの人が多い。

川沿いを約600mほど遡ったところに瀧安寺(りゅうあんじ)という立派なお寺があり、道端の道標は「滝まで1.8キロ、駅まで1キロ」となっている。

朝700前後なので、川面はやや暗い。いろいろとカメラの設定をいじって、田中希美男氏仕込みの写真を撮ろうとするのだが、どうもいつもと勝手が違う。

そう言えば、価格コムに、さるベテランが「この機械は、へたにP/S/Aで撮るより、プレミアムオートで任せてしまったほうが良いですね」と指摘していたのを思い出す。

いつもキャノンの一眼レフやS90で、「ホロイ」(ホワイトバランス・露出補正・ISO感度)を考えながら撮っている身からすると、このソニー機では、いずれも出来はするがやりにくい。キャノンならすっと行けるところが、二三段入っていって、「設定」という工作箱のなかにあったりする。

あのNEXを買ったときのイライラ感を思い出した。ははぁ、これはエクセルなんだな。いつも使っているキャノンは、早く言うとマイツールなんだ。ユーザーがああしよう、こうしようと思うと、素直にすっすっと付いてくる。

あと、造りの重厚さからいっても、やはりここはキャノンのSX30 ISを選ぶべきだったのかも知れない。ただソニーの名誉のために言っておくと、画質は悪くないと思う。あとでプリンターで焼いてみたら、満足のいく写真も何枚かはあった。

 

(KK西研究所・所長 西 順一郎)