先日、都内のとあるお宅を訪ねたのだが、そのときにテーブルの上を見ると、 どうもマイツールらしき書類が、二三枚乗っかっている。「アレ、マイツールか な?」と思って、マイツールだと放っておけないから、ちょっと借りて驚いた。
見ると、商品群の名前とその値段がびっしりと、およそ三ページにわたって載 っている。しかも、その値段には、カンマが三桁ごとに打ってあるのだが、それ がカンマでなくて、句読点の「、」が打ってあるのである。
これはたいへんだ。ワープロで打ってあるのだ。しかし、ちょっと見には、マ イツールそっくりの形である。きれいに桁ぞろえも出来ている。しかし、残念な がらマイツールではない。いわゆる表計算でもないのだろう。
たいへんな労作だ。これだけの値段表を作るのに、彼女は何日を費やしただろ うか? マイツールなら長くてもたぶん一時間前後で片づくだろうが、それをこ くめいにワープロで作成したわけだ。仮に三日掛かったとしよう。生産性は十分 の一か二十分の一だろう。
僕は、むらむらとノドからことばが出かかったが、ようやくかろうじて抑えた。 彼女はビジネスマンではない。OLでさえない。普通の家庭婦人の一人といえば いいだろう。だから、生産性なんか、そんなに問題ではないのかも知れない。
私が、彼女からその紙をお借りしたので、彼女は、むしろ僕がその手の商品に 興味があるのかと思ってしまい、話題ををそちらに持って行かれてしまった。 (^^;;
しかし、よく考えてみると、これは独り、彼女の問題にとどまらない。非常に 広範囲な問題、社会的な問題と考えることも出来る。
今や世の中はいつも間にか、コンピューター社会。
私がパソコンの到来を知って、当時のパソコン雑誌のハシリ『アスキー』に論 文「激変のとき」を書いたのが、1979年5月。翌1980年にマイツールの 先祖PIPSが出て、今年でちょうど20年になる。
パソコン革命10年目ごろは、まだパソコンもうまく使えば社会的エリートだ ったが、今日のように20年もたつと、猫も杓子もパソコンパソコンで、今朝コ ンビニで見た「DIME」の増刊号も、「デジタル・フレッシャーズ・バイブル」 とか銘打って、つまり、今やパソコンを使わないと人間ではないみたいな風潮な のだ。その中身はというと、機種は何を選ぶか、携帯は何を、かばんは何をばか りで、じゃぁ、どういう仕事をするのか、などはこれっぽっちも載ってはいない。
つまり今のIT革命も、コンピューターを使えばっかりで、コンピューターを 使って何をするのかは、まったく考えられていない。で、IT革命に乗り遅れた ら怖いよ、ばかりが強調されているわけだ。
わたしはコンビニから帰りながら、自分が、マネジメントゲームという「経営 とは何か、会計とは何か」を考えさせるものを専門にしていて良かったな、とつ くづく考えさせられた。
このほど、日経新聞社から関口和一著『パソコン革命の旗手たち』(1700円)が 発売された。これは昨年五月末から半年にわたり日経の夕刊に連載されたもので、 パソコン黎明期に燃えた若者たちを克明にとらえたなかなか良くできた本である。
それの179ページに、
「1978年にソードが開発した『PIPS』は、今日の表計算ソフトのような簡易 言語で、利用者が簡単に計算式を埋め込んでさまざまな集計に使うことが出来た。 グラフもかけるということで米国で人気を呼んだ表計算ソフトの『スーパーカ ルク』もあったが、いずれも専用の命令を覚える必要があった。
そこで(ヴァル研の)島村らは、コマンドレス、マニュアルレス、それにスタ ディーレスといった『三つのレス』を標ぼうし、だれもが簡単に扱えるようなソ フト(パピルス)づくりを目指そうとした。」
分かってないなぁ、新聞記者はいつの世も、、、。(^^;;
もう一度、最初の彼女の例に戻る。
<style=”text-indent:1em”> 彼女は、マシンについて情報を持たないが故に、ワープロを選んでしまった。
その結果、入力所要工数だけでも膨大な労力を費やさせられている。
それだけではない。ワープロでは、ソートもサーチも、グラフさえ出来ない。
もし彼女がマイツールを知っていれば、ソートの威力を利用するだろう。
- ● 商品名順
- ● カテゴリー別
- ● P順
- ● Q順
- ● PQ順
これらのソートによって、敏速な対応、お客様への適切な助言、ハイPからロ ーPまでの商品の位置づけ、品ぞろえ、仕入れ管理、在庫管理、ABC分析によ る業務の効率化、などが可能だ。
このほか、マイツールがあれば、日程管理と住所管理が出来る。実は彼女の仕 事では、この二つが、やはり決定的な重要性を持っている。彼女の顧客管理では、 サーチが大きくものを言うだろう。
しかし、こういうことを知っている人は少ない。ビジネスマンでさえが知らな い。知らないから、依然として、ワープロソフトを使ったり、表計算ソフトに甘 んじているわけだ。
マイツールユーザーは、自分たちの幸せをもっと知ったほうが良い。そして、 各自の生産性をもっと上げられるように、MG・MT・STRAC・マトリック スの四種の神器をしっかり組み合わせて生きて行ったほうが良いと思う。
(KK西研究所・所長 西 順一郎)
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