初めてナビを使う

  盆帰りで、初めてナビというものを使ってみた。地図好きの自分がなぜこれまでナビを使っていないかというと、そのハードソフトの急激な革新の進展性による。vicだ、DVDだ、HDDだと、ナビの進展はここ十年倦むことなく続いた。ひところのワープロ革命・デジカメ革命と同じで、日進月歩、秒進分歩、すべての商品は二三カ月で、たちまち陳腐化する。これでは買えない。

デジカメはここへ来て、ようやく落ち着いた観があるが、これまでに少なくとも5台は買い代えた。
10~20年前は、八ミリの変転が激しかった。ほとんど毎年のように買い代えていた。今は数年、ほとんど買わないし、四五年前の製品でも大差なく、不満もほとんど感じない。

ナビも毎回(今度こそ買おう)と思うのだが、いざとなると、(ちょっと待て)となかなか踏み切らない。新製品は意外に高額なのと、陳腐化が怖いからだ。

今回はレンタカーの営業所長が、「ナビは如何ですか? 一日500円」というので、すぐ飛びついた。馴れた道だが、ナビに触れる良いチャンスだと思ったからだ。
数日使ってみて、良く出来ている点と、良く出来ていない点があることがよく分かった。マシンは、なんと○洋電機の「ゴリラ」NV-40で、小型携帯用の持ち出し型である。

ナビはすごい!

  一番感心したのは、平戸の志々伎の○○という伯母のうちに行くので、その電話番号を入れたところ、ちゃんと現地の大浜へ一旦出て、そこから右折して数十メートル、郵便局の前で止まるところまで、細かく適切な指示が出たことである。
そのうちへのアクセスの仕方は二三通りあるが、ちゃんと我々が日ごろやる通りにピタリと出たのには感心した。あわせてもう一つ感心したのが、「到着時間の予測」である。これは、はるかに離れた地点から、「あと何キロ、これで行くと、到着は○時○分ごろ」と出るのだが、途中半信半疑で信じていなかったところ、実際に1559に予測通りに到着したのには驚いた。勿論途中で休んだり、道草を食ったりもするが、その度に正確に変更再予測するのである。これは凄い。STRACのG予測も、これほど見事に進めば、経営者はありがたいだろう。

もう一つ、ナビだから出来たこと、ナビがなければ出来なかったことも一つあった。それは、8/14に、平戸島の付属島「生月島」の姉のところへ行くのに、途中隣村のお寺に寄ってから行くもので、本来のルートから右へ逸れてしまった。
するとこのナビのソフトは、直ちにルートを変更、もう一つ別の、島の東側の海沿いの道を示したのである。

この道は、「船木みち」と言って、昔から知ってはいるが、一度も入ったことのない道である。しかし、これは面白いなと思ったので、ドライバーに提案し、ナビの言うとおりに走ってみた。結果は大正解! そのルートは、昔ながらの平戸の田舎の良さをそのまま残した、雰囲気も景色も素晴らしいドライブウエーだったのである。

途中、何度か停車して写真を撮りたい誘惑に駆られたが、つい諦めた。ほんとうに美しい海辺の磯の透明な水、遠近の島影、これぞ平戸という景色だった。こんな道が平戸南部にあるなんて、私も生まれてこの方65年になるが、ついぞ知る由もなかった。ナビよ、お主もなかなかやるのう!

さて、問題は?

(1)ハード面これは、デジカメなど一般のマシンでもしょっちゅう感じさせられることだ。
要は、「左にESC、右に実行ドン」がないために、素人ユーザーは頭に来るということだ。西研のマイツール経営教室では、「左手でESC、右手でドン」は、厳しくしつける。
これは、食事でいえば、「箸は右、茶わんは左」。自動車でいえば、「左でブレーキ、右でアクセル」とまったく同じである。GOとノットGO。

この点を一般機械設計者が知らないために、じつに我々は使いにくい。ところがマイツール設計者は、それを知っていた。だからいつも便利、いつも快適。

ナビは、特に目的地の再設定など、途中設定の多いマシンである。ところが、その肝心な設定のしにくいこと。「決定」のドンが右にあるのは当然として、左に「ESC」(取り消し、cancel)がない。人間は間違うものだ、という基本的な人間理解がない。

言わんや、揺れる走行中に、焦りながら設定をすることもしょっちゅうだ。間違ってあたりまえだ。そのときに手早く、どうやって直すのか、消しゴムで消すのか、ゼロに戻すのか。その設計はない。間違ったら修正が利かない。途中から、すぐ前や、最初に戻れない。間違っても兎に角最後まで行って、もう一度初めからやり直し。こういう設計を「オフコン」という。駅の切符売り場などに多い。

(2)ソフト面

ソフトには、プログラムの問題と、CDに収録された○ンリンの本当のソフト(コンテンツ)がある。九州バージョンが入っている。今回は、このソフトを使って走行するわけだが、これが、良くできた点と、だいぶおかしい点の両方がある。○ンリンさんのお世話になるのは、今回が初めて。
良くできた点は最初に書いたので、おかしな点を二点。

まず、昨日、磯ぞいの風光明媚な道を通って、その後、後半分を走るときに、当然私は、「大越みち」を通って、生月大橋に出る予定であったが、ナビ君が「西へ行け」と指示するもので、おかしいな、と思いながらも指示に従って走ると、まず地元プロなら行かない「獅子みち」を走らされた。

この道でも間違いではないが、狭くて曲折の多い悪路である。プロは「大越みち」と行って、まっすぐな近道の山越え道を使う。これが島民の常識。ところが、ナビは、常識を指示しないのだ。

帰り。意地でも「大越みち」を使うぞと、ナビはバスルートを指示するのに、「いいえ!」と強引に中野の交差点へいき、そこから大越え道を登り始めた。ところがこのナビ君、大越え道はプログラム外らしく、地図には載っているのに、盛んに「リルート」と言って、ルートやり直しを中で延々といつまでもやっている。気の毒なくらいだ。

ついに峠を登りきった途端に、なぜか今ごろ「分かりました!」とちょうど半みちのところから、ルートを正しく表示し始めた。

結論。こうした問題は、必ず付いて回ると思うので、設計者が完ぺきを狙うのでなく、ユーザーがシステムの細部を詰めるように柔軟性を持たせた設計をしなければならない。それと、学習AI機能。もう一つは、モニター制度。MGでいうと感想文。

人間は、神様ではないのだから、一人で、完ぺきなシステムを完成させることなど、どだい無理である。だから設計者はまず95%を作って、細かいところは、ユーザーにまかせる。MGの開発のとき、私はそうした。MGの今のルールの5%は、皆さんがやりながら作り上げてきたものだ。だから、MGは、作って27年目の今も変わり続けている。

マイツールは凄く、表計算は凄くない!

 マイツールは、ハード面では、「ESCは左、ドンは右」の優しさと、もう一つ、ソフト面では、「FKS/CMD」という自由性、拡張性を持った。私は、FKSを更新・複写などの基本的なハード機能に、CMDをそれ以外のコマンド補充用に使っている。ユーザー中心主義で、ユーザーが15分で金儲けが出来るように、見事に自由さ、自然さ、能率性を持たせたのがマイツール。そうではなくて、ひたすらカッコヨサを追及したのが表計算。まぁ、今になってみると、マイツール側も、少しはカッコヨサと、世界標準との連携を研究開発しないといけなかったが、、。

いずれにしても、最近のナビやデジカメと比べても、永遠に良く出来ているマイツールのお話でした。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)