デジカメS30

  九月末に、東北の十和田で結婚式があった。これは、ごく近い身内だったので、八ミリは私が撮ることに決めていた。しかし、私が次々と毎年のように八ミリを買い換えていたのは80~90年代。
ところが、ある年、デジタル八ミリ(本当は6.25ミリらしいが)が登場してから、劇的に画質が向上したので、ソニーのPC-7を買ったのを最後に、ぴたっと買うのをやめていた。

しかしそれも結構古くなったので、スキーに凝っている息子から「そろそろ買い換えたら??」といわれたのをいいことに、早速秋葉原の現金問屋に飛んでいって、最新のPC-120を、びっくりするほど安い値段で買ってきた。

というのに、ここ二年ほど、私の興味はなぜかデジカメの方に移ってしまっており、その新型八ミリも買っただけで研究することなく、息子に預けっぱなしになっていた。(タヒチに行くことは当分なかったし、、。)

さて、式の前日われわれ四人家族は、十和田湖西岸のリゾートホテルに行く前に、時間があったので、有名な奥入瀬渓流に立ち寄った。時間はすでに夕刻に近く、肝心な流れも少々薄暗い。

そういうときに、このキャノンのS30は、凄い実力を発揮した。聞くところによると、S40(400万画素)よりS30(300万画素)のほうが、画質的には優れているそうだ。その理由は、300万画素のほうが、一つ一つの画素の受光面積が広いからだ。特に、今回のように、もはや薄暗い夕暮れのしかも谷あいとなると、この受光面積が非常にものを言うようだ。本当は、ISO感度50も、200か400に上げたほうがよかったのかもしれない。

「暗ければフラッシュをたけばいいでしょう」というのは素人だ。フラッシュをたくと、自然な感触がどこかへ行ってしまう。最近のデジカメなり八ミリなりはとても感度が良いし、かつ露出の調整が自動で働くので、多少の日陰・うす暗がりは明るく写ってしまう。

一箇所、水が渦を巻いているような、面白い流れがあったので、ここを二三枚、オート(高速)とか、シャッター優先(低速)とか、条件を変えて撮ってみた。これが後で、プリンターで焼いてみると、われながら見事な一枚になった。

このシャッター速度を選べるやつ、この機械の前のIXYデジタル300では不可能だったんだよね。あれにイライラしたのが一年前。今回は悠々なのだ。

この後、十和田湖畔の展望台で、たまたま日没に出会ったが、こういうときの 撮影でも、この機械は、曇天とか夕暮れとか選べるので、優越感を感じることができる。

ビデオカメラPC-120

  さて当日の朝が来た。結婚式を撮るのも何年ぶりだろう。式は1200から始まるので、事前に一時間ほどゆっくりと準備ができた。
まずホテルの車寄せに行って、ホテルへのアプローチから撮る。次に、このホテルの売り物の湖畔の芝生だ。ひたひたと寄せる小さな波の音。逆光を受けてキラキラと輝く岸辺。はるかにけむる対岸の山々。そうこうするうちに、1150ご一行のバスのご到着となり、バスの扉から元気よく飛び出してくる子供たちを撮る。
受付の風景。司会者のご夫婦。入場。
ご入刀はなく、代わって「シャンペン流し」が珍しい。

続いて、指輪の交換。--この瞬間、デジタルズームを「on」にしておいてよかったと思う。普通、デジタルズームはぼけるので、私はカメラも八ミリも、常に「off」にしているが、準備の段階で、結婚式では近寄りがたい場面もあるかということで、わざと「on」にしておいたのが、この場面で活きた。

夜遅く帰京してから、とりあえずテレビで映写してみたところ、場面場面は非常にじっくりと、期待以上によく撮れていた。

失敗は二つだけ。一つは、外部マイクを完全に忘れたこと。このPC-120は、内臓マイクが、本体上部に、フラットに付いていて出っ張りがない。あら、これでいいのかな??と思ったら、案の定、映写してみたら、非常に音が小さい。

毎年タヒチに行っていたころは、何しろ三脚代わりの「一脚」と、歌や踊りを撮るための「外部マイク」、そして「ライト」まで忘れることは無かったが、やはり久しぶりとなると、カメラ本体以外はすべて忘れている。

音は小さく、画面は少々だが揺れる。しかし、全体としては、アップでテレビ画面風に撮ったので、みんなの表情がいきいきと分かる。

かつ、今回は、場面場面をゆったりと長く撮った。特にスピーチを聞かせるつもりで、ロングで撮った。そのへんが、全体として、私の結婚式撮影歴のなかでも、珍しいほど今回はよく撮れたと自画自賛したくなる。

来年は三年ぶりのタヒチなので、「一脚、外部マイク、ライト」の三点セットは何があっても忘れないようにしよう。

プリンター895PD

 さて、式から帰ると、その新夫婦もすぐ訪ねてくるかと思ったので、早速買ったばかりの「パソコン要らず」のデジカメプリンターに、愛用のS30からCF(コンパクトフラッシュ)メモリーを差し替えて、印刷を始めた。式の前にも、一通りの写真の焼き方は研究していたが、今回はさらに突っ込んで、印画紙の種類も増やし、さまざまな焼き方を試みた。

たとえば、印画紙にも皆様おなじみの光沢紙もあるが、一方「つや消し」というのもある。値段は一枚10円、11円ぐらいから18円ぐらいまでで買える。一年前のカード型が一枚40円だったのとは大違いだ。サイズは普通のL判と、はがきサイズだ。

特に私は、はがきサイズに上半分だけ写真を焼いて、下にボールペンで手紙を書いて人に送るというのをやりたかったので、今回それがスイスイとできたのはとても嬉しかった。(^^)v

このキャノンのプリンター895PD(プリントダイレクト)は、普通のプリンターと違って、パソコンが要らない。CFメモリーを突っ込み、液晶画面を取り付けると、あとはいくつかの条件を選びながら、結構写真らしい写真が焼けるのだ。

私はパソコンは好きだが、写真だけは、パソコンでなく、プリンター直接で焼きたかったので、この手の「プリントン」「プリントン2」などは、何年も前から、研究だけはしていた。それをようやく手に入れて、こうして直接に好きな画面を好きなときに、好きなだけ焼くというのは、快感だ。

写真がアナローグからデジタルに移ったこと、カメラもキャノン・オートボーイからS30に移ったことの最大の成果は、自分で、好きな場所、好きな時間に、好きな画面を好きなだけ焼けるということではなかろうか。

外注より自力。自分で産出する。自分で創り出す。それがたとえようも無くすばらしいと私には思える。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)