朝のレストラン

  年に十数回ぐらい、近所のデニーズ東大井店に朝飯に来る。特にこの冬は、家族の都合で、わりかしたびたびとなった。朝飯の取り方にはそれこそ無数にあるわけだが、いつの間にか結局このデニーズに朝8時に来るのが定番になってしまった。

食べるものも、三四品、予算1000円と決めた。今朝のメニューもほぼいつもと変わらず、フレンチトーストのプレート、コーンスープ、冷たい牛乳の三品、1000円ちょっと。本当はヨーグルトも取りたいのだが、それでは少々予算オーバーとなるので、三品で留める。

私のメニューは、トーストセットか、フレンチトーストか、和食か、全体でもせいぜい四種類ぐらいで、家で(行こう!)と思ったときに、第一印象でぱっと頭に浮かぶものに決める。今朝はフレンチトーストだった。
四回に一回は和食にするが、和食の中でも焼き魚定食が好きだ。ここの焼き魚はシャケに決まっている。あと納豆は好きではないので、温泉卵の方にする。

さて、座席だが、この店の良いところは禁煙席と喫煙席が大きく分かれていることだ。場所的には喫煙席の方が明るくて、道路沿いで、いわゆる「陽」なので好きなのだが、今日のように静かに仕事をするとなると、これは絶対禁煙席にしないと落ち着かない。

喫煙席には声高にしゃべる人や、カップルが多い。一方、禁煙席には、物静かな一人者などが多い。今日は、私のほかには、VAIOを持ち込んでなにやらパチパチものを書いている35歳前後の野球帽が一人。

ホテルの3B

  そういえば、清閑さんは夕食を大事にするようだが、私は朝食をことのほか大事にする。かつて20年も前に「日経産業新聞」に、香港のハイヤット・リージェンシーの人が、「ホテルの3B」というのを書いていた。ベッド、バスルーム、ブレックファーストだという。これはいつになっても至言で、真理だとさえ思う。ホテルに泊まって不満不具合があるとすれば、この三つのどれかがまずいことが多い。

柔らかすぎる安っぽいベッド。昨日の名古屋の全日空ホテルは良かった。ベッドが全然引っ込まない。

狭苦しく、貧乏たらしいバスルーム。ドアが膝に当たったり、シャワーのお湯が弱々しくしか出なかったり、シャワーヘッドの穴が詰まっていたり、カーテンが臭かったり、、、。

良いお風呂は、たとえばワイキキのプリンセス・カイウラニのバスルーム。超贅沢である必要はないから、快適に使えればよい。特に私はシャワーをよく使うので、シャワーの調子が良くないと嬉しくない。

最後にブレックファースト。悪いところは、ビュッフェスタイル(バイキング)と言いながら、全部取らないと1セットにならないところもある。

逆に選び放題という凄いのもある。昔のボラボラホテルの日曜日の朝飯。大阪・堺のリーガ・ロイヤルの朝食、博多のハイヤット・リージェンシーの朝飯。パンだけでも選り取り見どりだ。

悪いところは、コーヒーがない、コーヒーは有料、牛乳がない、牛乳は有料。先日なんか、「牛乳は?」と言ったら、「牛乳は400円です。」と言われた。もちろん頼まない。主義に合わない。

さて、日本で「えー、コーヒーは要りませんか?」とまるでお茶のように湯水のように注いでまわるホテル・レストランはまず見あたらない。アメリカの良いところはそこだ。これでもか、と薄いいくらでも飲めるコーヒーを、何回でも注ぎに来る。これだけは是非日本でも取り入れて貰いたい習慣だが、ダメなら「勝手に注ぐ」でもいいよ。「コーヒー、お願いします!」は、意外と良くないものだ。席に案内する、これも良くない。

このデニーズも、以前はコーヒーだけはまずかった。これだけの雰囲気の店がコーヒーがまずいなんて。まずいコーヒーは、飲んだ後、いつまでも口の中がしびれたように、悪い後味が残る。

このデニーズのすぐ近くに、京浜急行駅のすぐ下に、某有名チェーンレストランがあるが、これは×。暗い。けちっぽい。先日やむなく行ったら、ヤングが多かった。安いけど。

Sさん

  Sさん。パートのおばさん? 40歳? 筋骨。明元素。しゃがれ声だが、親切だ。私が行くと、いつも同じようなものなので、彼女はよく分かってくれている。昔、ホテルオークラ新潟に、Yさんというとても凄い女の子がいた。別に美人ではなかったが、的確に客を憶えていた。私が行くと、座るところも決まっているので、「あ、例のものですね!」で、黙っていても、ワッフル・冷たい牛乳・コーヒー・グレープフルーツハーフの四品が出てきた。100点、120点だ。

そのYさんほどではないが、このSさんも、このひとがいれば落ち着く。安心だ。ほかの女子店員や店長ではこうはいかない。相手を理解していない。

話は変わるが、うちのマンションのすぐ前に有名コンビニがある。私はこのコンビニが大好きだが、一点だけ気にくわないのが雑誌売場である。まるで皮膚病が広がるようにこの一年二年ピンク雑誌の面積が広がってきた。今や9割かたどぎつい雑誌で、昔あったパソコン雑誌等は、一種か二種しか残っていない。それも買いたいものではない。

このコンビニチェーンの最トップは、もともと出版流通業の出身のはず。であれば、この現状をご存じなのだろうか? なにか自動発注システムのせいで、放っておくとこのようになってしまうらしい。店主はあずかり知らないそうだ。自然に悪貨が良貨を駆逐しているのだ。MQアップと人間の倫理では、絶対に倫理の方が優先すると思う。

いつの間にかVAIO君が席を立って、騒々しい若いギャル軍団が店内に入ってきた。9:30だ。どれ、店を出よう。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)