六年ぶりの西研忘年会で
年末の12/15(月)は、実に六年ぶりの西研忘年会だった。なぜ最近やめていたかというと、集客や人数の読みや手間が大変だからである。
ところが、11月ごろCPL社のN社長から電話があって、「忘年会を復活しませんか?」という。「やってもいいですよ、準備を全部やってくれるなら」ということで、六年ぶりに西研忘年会開催の運びとなった。
予告どおり、場所取りから集客、PR、料理予約まで全部C社でやってくれて、当日現場へ行くと、同社の若手が皆で受付などをしていた。
唯一つ私がやったことは、名簿作り。これだけは、私の得意技なので、それに殆どの参会者は、西研新聞読者名簿にすでに登録済みである。住所氏名電話番号ファックス番号携帯番号まで、殆どの人のが私の名簿上にある。私は、N社長がいう「この人、この人、この人、、」というのを、名簿にチェックを付けて、SHドンするだけだ。
一冊の凄い本
さて、懐かしい顔ばかりだが、「どこの誰、なぜ来たか?」をやろうということになり、さすがに30年のMG歴の中から集まった人たちだけあって、大変な層の厚さと猛者ばかり。「忘年会」というより「同窓会」の感じである。
その中で、金沢のE命さんという人は、泣く子も黙る思想人。彼はおもむろに一冊の枕のような分厚い本を取り出すと、「この本を読め」と一言。
その本の名は、吉田武著『虚数の情緒・中学生からの全方位独学法』(東海大学出版会、4300円、2000年)。
「どれどれ、ちょっと貸して」と目を通すと、外見や書名に引きかえ、中身は非常に易しく、読みやすい。なるほど、これなら面白そう、と帰って早速アマゾンドンしたら、びっくり、翌16日昼ごろにはもう手元に届いた。
厚いけれども読みやすい
この本は大部だけれども読みやすい。厚さはなんと52ミリもある。ついでに私の大好きな『地図を作った人びと』(河出書房、2001年、3900円)が表紙ともで40ミリで、枕に丁度いいかなというところなので、52ミリだと枕には大きすぎという気がする。
読みやすさ、、。この数学の本は大きいけれどもたいへん読みやすい。似た本では、今坂朔久の『経営者のためのダイレクト・コスティング講話』(白桃書房、昭和34年、当時1800円)がある。ちょっとした枕になりそうなこの本も、中身は今坂先生の講義を録音・速記したと思われ、口語調で読みやすく接しやすいものである。こっちは30ミリ。
さてさて、中身がまた変わっていて、数学といいながら、物理学・歴史・哲学・天文学・教育学・人生論と、まだ全部を読んでいないからここにはよく書けないが、実に幅が広い。「そもそも文系・理系と分けるのが誤りだ」とのご主張だが、私は、この文系・理系の分け方が好きなので困ってしまう。
あと、ちょうど1000ページなので、何割読んだか即分かるのも面白い。私はいま22.8%まで読んでいる。
私は厚い本が嫌いで、厚い本を本気で読むときには、思い切って真ん中にカッターナイフを入れる。こうして二分の一にすれば、全国どこにでも持ち歩ける。
ところが、今回だけは別で、著者が「厚いということが重要なのだ。日本にも外国みたいにこういう大部な図書がどんどん出てきてほしい。それの見本として書いた。」と前書きに主張しているわけだから、さすがの私も、切るに切れない。
ということで、外には持っていけないので、もっぱらトイレにおいて、一回に五ページ、十ページと細切れに読んでいる。おかげで長くなりそうだ。
松岡正剛の『千夜千冊』にも
中には、金科玉条がちりばめてあると思えばよい。こういう幅の広さは、戦前の旧制高校の教育のあり方に似ている。日本は、終戦後、アメリカの策略によって、こういう素晴らしい人間形成の教育制度を失ったのが返す返すも残念だ。
私自身は文科系とは思うものの、かといって文学を読んでいるわけではないし、物理・数学・天文学のポピュラーな大衆向けの本が好きである。昨夜も孫を連れて近くの本屋に行ったが、いつも必ず寄るのは天文学・地学のコーナーである。
昨日も『地球46億年史』みたいな本があったが、とうとう買わずに帰ってきた。
今日また行ってみよう。
今回のような良い本を、金沢のE命さんはどんなツテで知ったのだろう? ぜひ知りたいと思って昨日電話してみたら、「いや、たまたま本屋で見つけただけですよ」と至極あっさりした返事。それにしても、よく買った。
インターネットで吉田武の『虚数の情緒』を引くと、松岡正剛の『千夜千冊』1005番目に取り上げられていることが分かった(2005年)。ここに、かなり詳しく本書の中身が扱われているので、概略を知りたい方は覗いてみるといい。
これまでにも、『はじめて読む数学の歴史』(ペレ出版)とか、いろいろ読んだことはあるが、この吉田さんの本ほど、ゆっくりじっくりと急がないで、噛んで含めるように書かれた親切な本は初めてだ。
買うまでもないと思った方も、一度本屋・図書館などで巻頭言だけでも読んでみる価値は十分あると考える。
(KK西研究所・所長 西 順一郎)
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