初日の出来事
ハイアット・リージェンシー・福岡が好きだ。名古屋の全日空ホテルと並んで、朝食が良い。(もちろん、この二つ以外にも朝食の良いホテルはいくつもある。)
今回、このホテルに二泊したので、朝食を二回摂ることが出来た。
一日目は、今回はラッキーで、窓際の明るい席に案内された。私はレストランに必ず本を持っていくので、いつも明るい窓際が希望なのだが、なかなか取れない。しかしこの日取れたのは、いつもいる航空関係の乗務員たちが見当たらず、空いていたということもあっただろう。
さて、食事をしながら何気なく外を見ると、ちょうど出勤時に当たり、ホテルの外を、サラリーマン、サラリーガール、学生などがひっきりなしに流れていく。右から左へ、つまり駅から職場や学校方面へ歩いているのである。
そのとき、はっと気がついたのは、女性の多くがひざを曲げて歩いているということだ。いや、よく見ていると、十人に一人ぐらいは、ちゃんとひざを伸ばして歩いてくる女性(あるいは女生徒)もいる。
なぜ女性はひざを曲げて、まるでお猿さんのように歩くのだろう? もちろん例のパンプス(あるいはハイヒール)のせいだ。ハイヒールなのに、ひざを伸ばして闊歩するというのは相当難しいだろう。その癖がハイヒールでないときにも習い性になっているのだ。ちなみに、男性でひざを曲げて歩く男はさすがに見当たらない。
かつてハワイの「JAIMS」(日米経営科学研究所)に行ったとき、今はなき二世・ハワード三宅さんが、「日本人旅行者か、ハワイ生まれの女の子かは、歩くときの姿勢を一目見れば判る」と言われた。日本から来た人はどちらかというと全員下向き加減で背を丸くして歩いているのに対し、ハワイっ子は、胸を張って、堂々と歩いているということだった。これはタヒチも同じだと思う。
二日目の出来事
さて、二日目の朝は、昨日のような窓際の一等席は取れなくて、残念ながら一番奥のやや暗い席だった。しかし今回は、またもやラッキーなことに、すぐ左前方に、どこかの航空会社のスチューワデスたちが二組座っている。
航空会社名は分からない。日本人に似ているが、そうでないかも知れない。スチューワデスというのは、このように朝食のときにもきちんとした服装で、身なりも姿勢もなかなか佳い。スカートの左右に10センチほどの切れ込みがあって、センスが光っている。見ていて、「ハハァ、スチュワーデスというのは一種のマネキン(ファッションモデル)なんだな、いつもきちっと、格好良くないといけないんだ」と気がついた。
ところが、よく見ていると、二つのテーブルのうち、向こう側の二人が、二人とも両肘をついて食べている。えっ、これはいけない! こちらの二人は、揃ってひじをつかないで食べている。制服からしても、スカーフの柄も、同じ航空会社であることは間違いない。
ひじをついて食べるとすると、これは某国のエアホステスかも知れないし、こっち側が二人ともついてないということは、日本人で、単なる癖の(しつけの)問題かも知れない。
いろいろ考えながら、おかげで退屈せずに朝飯が終わった。彼ら航空会社の乗務員たちは、レストランに入るときには必ず例のキャリーバッグを入り口に置いて入るので、出掛けにそれをチラッと横目で見たら、果たして某国東方航空(○○イースタンエアライン)と書いてあった。
とあれば、仕方がない。日本人なら、食事のときにひじをつくのは躾がなってないことになるが、外国では、そういう文化はないらしいので、別段とがめるに値しない。
いつも我が家で、孫娘たちにやれ「ひじをつくな」「箸をちゃんと持て」「鉛筆の握り方がおかしい」とやかましく注意しているが、なかなか直らない。しかし日本人として、一個の人間として、将来を考えるとき非常に大事だと思う。
話は違うが、博多MGの会場に額があった。「修天爵而人爵従之」(天爵を修むれば、人爵これに従う)。なかなか良い言葉だなとつくづく思う。
(KK西研究所・所長 西 順一郎)