いつもより二時間早く
八月の第一週に三浦半島で毎年「子供MG」が行なわれている。家内の主催なので、その三日間私は珍しくヒマになる。昨年は、下の孫娘が「初MG」だったので、私は中日にビデオ撮りに行ったが、今年は二回目に付き、最終日だけ付き合うことにして、中日は貴重な「山歩き」の日にした。
思えば、八月は暑いさかりとは言いながら、山へ行くことが多い。帽子をかぶり、タオルをぶら下げて、できるだけ日陰の多いルートを選んで歩く。
昨日8/04は、いつもより二時間はやく、850には東京駅へ。この時間なら奥多摩にもいける時間だが、今日はゆっくりした山歩きにしようと、高尾ゆき快速に乗る。
車中から紅葉屋本店に「10時過ぎに着きますから」と電話して、山菜おにぎり弁当を予約する。実際には、高尾駅が1000、京王線乗換えが1010、紅葉屋に着いたのが1023。予約の弁当は、店先の小型冷蔵庫の中にあり、なお10個程度の在庫があるようだった。
高尾山と言っても、ルートは二つある。基本的には「一号路」と言って、登山口からすぐ右の車道に入り、沢沿いにゆるゆると登って行く。今日は調子は良くないほう。いつもより休みが多く、スピードもゆっくり。
途中、リュックからNEX-5を出して、逆光にきらめく大きな葉っぱなどを撮ってみるが、広角だとほとんどボケないので、やはりいつもの標準ズームに付け替える。
実は、二日ほど前にY電機で49ミリのMCプロテクターフィルターを手に入れたので、これだけでずいぶん気が楽になった。二ヶ月前の6/03、NEX-5が一斉発売になると、日本中から49ミリフィルターがいっせいに消えた。あれから二ヶ月、ようやく手に入るようになったのだ。
山上の読書
この日の大きなイベントは、いつもの金比羅台展望台で例の山菜おにぎりを平らげたあと、一時間ぐらい、木陰の休憩テーブルに座って、風に吹かれながら山根一真の『はやぶさの大冒険』(マガジンハウス)をじっくり楽しめたこと。これまで数え切れないほど高尾山に来ているが、上で本を読むとか、昼寝をするとかいうことは、まったくなかった。歩きながら写真を撮るのが精一杯だった。今日のように1~2時間早く来ると、このように普段考えられないことができる。
下界は35度の猛暑なのだが、ここ海抜385mの金比羅台で木陰に座るともろに天国だ。見る間に汗も引いていく。
読む本も、七年がかりで小惑星イトカワに往復して、つい先ごろ6/13にオーストラリアに帰ってきた小惑星探査機、まさに天空の話だ。
なぜこの本が面白いかというと、私は小さいときから科学少年であり、天文好きということもあるが、もう一つは、今回のプロジェクトが、まさにソニー・ホンダのやったこと、世界最先端の科学技術への挑戦であるからだ。
小惑星へ飛んでいって、そこの資料を持ち帰ってくる、それによって、46億年前の太陽系が作られるときのサンプルを手にすることができる。
もう一つ、極熱極寒の宇宙空間は、厚さ数万mの優しい空気に護られた地球上と違って、われわれ人間が生き残ることの出来ない厳しい環境。その中で、さまざまな部品がどんどん経年変化し、劣化していく。あれもダメ、これもダメというリスクカード続きの中で、最高の智恵を働かせて、生き残る道を探し、ついに成功して帰ってくるという話は、まさに血湧き肉踊ると言ってもいいだろう。
天狗焼きは天下の名品
山の上の読書は、涼しくて快適なようだが、欠点はやぶ蚊がどんどん飛んでくること・・・と言いたいが、この日は全く来なかった。空気の透明度が高く、新宿までははっきり見える。一時間ほどゆっくりしたところで、12時ちょうどに再び登り始める。疲れも汗もきれいに取れてしまった。五号、六号、七号という立て看板(これが里程標代わり)を難なく歩き、いつものリフト終点(下から1.9キロのマークあり)到着。あと300m歩いて、もう一方の「ケーブルカー終点」まで歩く。途中、往路随一の展望場所からの眺めは、ここ二三日の強い南風のせいで、いつもよりくっきりしている。ここを右へ50m。駅の前に、トイレと天狗焼きの小店がある。
ここの天狗焼きは隠れた絶品で、一個120円を一個だけ買ってかじるのを楽しみにしている(なにしろ、やせるのが目標)。最近は団体客が列をなすので買えないこともしばしば。幸い今日は一人も並んでいない。
「冷たい天狗焼きも作ってみました」と言うので、ためしに買ってみた。なるほど、これなら猫舌の自分でもやけどせずに食べられる。
さて天狗焼きを食べれば、本日の全工程はめでたく終了だ。リフトの乗り場へもどり、カメラ以外はリュックにしまって、いざリフトにのる。
この10分間のリフトがまた快適そのものなのだが、いつの頃からか、途中に強制写真撮影ポイントが設営された。これをどうやって避けるかが憂鬱だ。
この強制撮影ポイントだけは、ミシュラン三ツ星にも、世界遺産にも欠格条項だと思うので、ぜひ高尾登山電鉄はこれを即刻やめてほしい。せっかくのすがすがしい都民の散歩道を壊していると思うのだが、誰も感じないのだろうか?
幸い1347の準特急新宿行きにスレスレで間に合った。1515頃には大井町に帰着。
いつもより二時間はやいペースであった。13000歩。
(KK西研究所・所長 西 順一郎)
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