大村空港で

お盆はいつも田舎の長崎県平戸市志々伎町というところに墓参りに帰省するのだが、今年も8/15に精霊流しを終えるとほっとして、翌朝の船で佐世保に渡り、大村空港(長崎空港)経由で帰京する。佐世保では、MG仲間の吉原君が、わざわざクルマで大村まで送ってくれる。
今年は大変早く着いたので、1845の飛行機まで5時間余り空港内で時間をつぶさなくてはならない。

空港内の本屋を覗き、はじめは推理小説でも・・・と好きな梓林太郎ものを二三冊探したが、ひょいと上を見ると、阿川弘之の『国を思うて何が悪い』光文社文庫、2008年、500円がある。

手にとって見ると、さいわい字が大きくて読みやすい。(文庫本は好きなのだが、古いものはすべて字が小さく、ルーペでも使わないと読みづらい。顔をしかめてまで読む気はしないし・・・。)

この本は、あとがきが面白い。最初の語り下ろし(書き下ろしではない)出版が1987.05月(昭和62年)カッパホームズとなっていて、以後、10年ごとに3回目の出版なのだそうだ。今回は2008.04刊。

第一版のときは大いに売れたそうだが、20年も経った今回の文庫本のときにはかなり時代がずれていて、著者としては無理ではないかと危惧したらしい。しかし読んでみると、まったく古臭くなく、中身はまたとなく役に立った。

阿川弘之との出会い

実は私は、昔偶然、彼と会っている。もちろん相手はそんなことは知るわけがない。私は昭和36~41年、大学を出てすぐの五年間(新入社員時代)、生まれ故郷の長崎にいた。三菱重工長崎造船所は、長崎市街地の対岸に約2キロにわたって布陣している。一番南は立神といって、船のドンガラ(船殻)を作るところだ。その昔、戦艦大和・武蔵の二隻のうち武蔵を作った船台があるので有名。

この船台から東方、南山手を望む景色は、たぶん長崎観光の中でも、一二を争う指折りの景観ということになるだろう。残念ながら、一般人は入ることは出来ない。(そのころ、ここから「南山手」という八ミリを撮ったことがある。)

当時、勤労部管理課にいて、労政あるいは社内報を担当していた私は、ある日のこと、上司から「阿川さんと秋山ちえ子さんを現場に案内しなさい」と命じられ、ご案内したことがある。そのときは、なぜ阿川さんが三菱に来たのか、なにも知らない私だった。

海軍提督三部作

司馬遼太郎の『坂の上の雲』はもちろん良いが、阿川弘之の標記三部作『米内光政』『山本五十六』『井上成美』はいずれも素晴らしい。私の家宝のひとつになっている。米内については、盛岡の人というほか特に調べたことはないが、山本五十六の方は、長岡市にたびたび行く機会があるので、まえに板東氏にお願いして、長岡駅近くの山本五十六記念館に入ったことがある。

山本五十六は、昭和18年(1943)四月ラバウル近くのブーゲンビル島で撃墜され戦死した。そのときの搭乗機の左翼がパプアニューギニア政府の協力で平成元年(1989)に里帰りした。その現物に触れたのが大きな感動だった。

三番目の井上成美については、この人は相当にまじめな神経型の将軍だったようだが、戦後も横須賀市の荒崎海岸にご自宅あとがあったので、何回か調査に出かけたが、ついに特定できなかった。(まだ諦めたわけではない。)

国を護る

この本は安いし、小さいし、字は大きいので、読もうと思えばすぐにでも読める本だ。内容が素晴らしい。いかに戦後のわれわれ日本人が腰抜け腑抜けでやってきているかがよく分かる。国を護るのは、家族を護るのと同じことで、まず第一番に大事なことだと思う。
それなのに、国を護る必要はないなどと、訳の分からぬ教育を(マスコミからも)されてきているのだ。最近の民主党によるあやふや政治を見ていて、薄ら寒くなるのは私だけだろうか?

われわれ日本人は、もう一度「国を護る」という原点に立ち返り、千年~二千年先を考えて歩んでいかねばならない。

それにしても、各地のMG会場でこの本に触れてみて、手を上げさせてみると、最近の若い人たちは、漫画以外、本はいっさい読まないらしい。「これを機会に、一冊読んでみます」という感想文が何通かあったが、果たして読むかどうか?

読書教育も空虚になっているらしいのだ。

(KK西研究所・所長 西 順一郎)