荒崎へ
本稿先月号で、「井上成美の邸跡が何度行っても見つからない」と書いたら、なんと編集部のA嬢が「インターネットにありますよ」と、写真つきページのURLをメールで知らせてくれた。この「写真つき」というのが心強かった。(同ページは、「井上成美邸宅」で検索するとヒットします)これまで何回か行って、どうもそれらしいお宅はあるのだが、人に聞くのはなんとなく憚られるしで、分からぬままに帰ってきていた。しかし、諦めきれない。
昨日10/05(火)は、天気もそこそこだし、広島MG以来の運動不足を解消しておかないと、また今週も木金・土日とMGが四連荘続くので、思い切って三崎口まで歩きに行くことにした。
A嬢からの情報によれば、「なお、最後の海軍大将として著名な井上成美の邸宅は、この公園(横須賀市・(長井海の手公園)ソレイユの丘)の近隣に所在している」と書いてある。
これまでは、毎回バスの終点荒崎から南に歩いて長井六丁目あたりを探したが、今回は、ソレイユの丘側からアプローチすることにしてみよう。
三崎口に着くと、まもなく荒崎行きのバスが来た。バスの運転手に「ソレイユの丘に行きたい」と言うと、「それなら終点一つ手前の漆山から南に600m歩けばいい」と的確に教えてくれた。
お役所仕事
その一週間前、久しぶりの北鎌倉巡りには、キャノンの一眼レフX4を持っていったが、今回は、芸術写真でもないと思って、先にも書いた「SX130IS」(12倍望遠)にした。というのは、何年か前に井上邸を探してうろうろしたときに、遠く伊豆大島が見えたのをかなりな望遠で撮った覚えがあったからである。漆山バス停を降りて、言われた道を南へゆるゆる歩き始める。道端の民家の花々がきれい。ハイビスカスの変種みたいなのがあり、ちょっと先には青紫の朝顔が石垣一面に咲いている。
ウーム、こんな写真を撮るとなると、やはりメモカメラのSX130よりか、画質に凝ったS90の方が良いかも、とすぐカメラを取り替えた。S90は望遠はそこそこだが、画質は写真クラブ向きだ。
まもなく、あっという間に「ソレイユの丘」らしいところに到着。ただし、だだっ広くて、なんとなく変な感じ。メイン建物の左の事務所に入り、「食事のできるところは?」と聞くと、少し先、右奥のレストランを紹介された。
平日とあって、昼時なのに他に客は一組だけ。マグロのづけ丼が1200円。味はともかく、館内の暑いこと! 全体に、客のことは考えていない。
ここは、帝国海軍第二横須賀航空基地跡だったのを、近年横須賀市が南フランスのプロヴァンス地方をモチーフにテーマパークにしたもの。しかし、お役所のやることは、アイデアの先走りで、客のことは考えないから、TDLあたりとは全く違って、二度くることはないだろう。
それより、井上邸を探さなければ、、。
あった!
早々にソレイユさんを失礼して、どこだろう?と思いながら、以前数回歩いた荒崎との間、長井の畑を行く。さいわい、耕運機を運転している農夫がいた。インターネットの「井上成美宅」の写真を示しながら、どこでしょうと聞くと、「向こうに民家が見えますね。あの向こうを左へ海の方へやや登った辺りです。ただ、このうちは壊しましたから、行っても何もないですよ」。
えっ、すると、この写真は、もう古いということか? それでも行くしかない。教えられたとおりに海側に歩いていくと、井上邸にぴったりのイメージの別荘があった。
人はいそうにない。失礼して低い鎖をまたいで、海の見える庭に出てみると、やはりネットの写真の中の一枚「井上邸から見た、江田島に続いている海」にぴったり同角度の景色が展開した。
なかなか、良いムードのお宅だ。非常に似てはいるが、しかしこれではあるまい。写真を沢山撮らせていただいて退散する。
そこを出て、左へ20m、車が一台とまった明るい家がある。と、左を見ると、なんと、写真にある門柱が二本。奥のこんもりした植木もそのままだ。(あとで写真を見ると、立ち入り禁止の仕切りの鉄棒もそのまま)
ついに見つかった。良かった。このネットの写真と、先ほどの農夫の助言がなければ、危うくこの門柱を見落とすところだった。
そっくりさん
ホンモノの井上邸は、跡形もなく取り壊され新築されているので、先ほどの二軒となりの井上邸そっくりさんのお宅に逆戻りして、もう一度庭を見たり、庭からの海の眺めを写真に撮ったりして、引き揚げることにする。庭にかぼちゃの花が一輪可愛らしく咲いている。井上邸から荒崎バス停への道は一部狭く荒れていたが、ここをかつて井上大将が幾度となく歩いたのかと思うと、胸がジーンとする。
あとはバス停まで10分。見覚えのあるきれいなトイレもそのままだ。
帰りのバスの運転手は、若くてぶすっとして、愛想がなかった。ただ非常な安全運転ぶりには感心した。
(KK西研究所・所長 西 順一郎)
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