発端 ——- プロローグ
今日は1999年3月15日。僕は、この日を忘れないでしょう。そう。本日、 ようやく「キャッシュフローSTRAC」が完成を見たのです。この日までの道 のりは、結構長かったですね。
まず、川崎の小川税理士先生から、「MGにはキャッシュフローが無いとね~」 と言われたのが、もうそろそろ二年前。昨年四月のMGのときには、手書きで作っ て見せてくださり、また同じことを言われたので、さすがの僕もそろそろ観念し て、半年後の昨年十月の小川会計MGには、一応これぞと言うものを持参したの ですが、先生は、「そんなものじゃないよ」とばかりその晩、MG終了後、ご自 宅のエクセルで開発し、翌朝「ほれ!!」と持ってきて下さったのだが、これが 難解で、どうもよく分からない。
会計が、二表から三表になる
たまたま時を同じくして、昨年夏頃から、わが国にも「キャッシュフロー経営 ブーム」が押し寄せてきた。それは、なぜかと言うと、いよいよわが国も、アメ リカに遅れること十年にして、ようやく2000年3月期決算の上場企業から、 今までのB/S、P/Lのほかに、C/F(キャッシュフロー計算書)という第 三の財務諸表の開示が義務づけられることになったからである。
キャッシュフロー計算書とは、在来の発生主義による会計が、いたずらに精緻 化し、かえって現実はどうなっているのか、分かりづらくなってきた。そこで、 もう一度昔の素朴な「現金主義」に立ち戻って、「黒字倒産」などという好い加 減なことではなく、時代が「貸ししぶり」などという超厳しい時代だけに、平た く言うと「貯金通帳経営」、自力で資金を転がして行けますか、と言うふうに、 経営が問われるようになってきている。
要するに、一昔前までは、「借金経営」が可能であった。銀行は、「金を借り ろ、借りろ」とばかり言ってきた。ところが今度は、一転して、「貸さない、返 せ」という。こういう中で、どういう経営をすれば一番良いのか?
折しも昨年秋から、書店は時ならぬ「キャッシュフロー経営書ブーム」になっ ている。私も、数冊本を買って研究してみた。すると、キャッシュフロー計算書 には、「直接法」と「間接法」があることが分かってきた。
直接法は、損益計算書の売上高からスタートするトータルで本格的な方法であ り、間接法は、利益からスタートする簡便な方法であるが、うまく調整すれば、 直接法と同じ現金の増減がカウント出来る。ということで、オーストラリアを除 き、アメリカでも、間接法が多用される傾向にある。ということは、来年からの 日本での情報公開でも、当然間接法の花盛り、ということになるのであろう。
小川MGが開発のタイムリミット
私は、98年10月の小川会計MGを目指して、九月いっぱい泥縄のにわか勉強 をし、STRACから始まり、「営業CF、投資CF、財務CF」の三分法にの っとったSIMドンを作ったのだが、残念ながら、小川先生のお眼鏡には適わな かった。そして、98年10月2日の夜、ご自宅で、エクセル版を作ってきてく ださったのである。
小川先生は、間接法では、中小企業の役に立たない、と明言される。だから、 当然小川先生が作ってくれたモデルは、STRAC戦略会計から始まる直接法で ある。
わたしはこれを何とかして、MGに取り入れたいと何カ月も研究してきた。損益 のところは簡単だ。しかし、これをバランスシートに取り込むところが、先生の ご説明をじかにお伺いしても、どうもいまいち飲み込めない。
10月が11月になり、12月になり、宿題になってしまった。その間に、今 度は、下関の河村社長の「四分法バランスシート」まで出現する。あれこれする うちに、またぼんやりとヒントが閃いて、試行錯誤を続けるうちに、数日前から だいたいめどが付いてきた。
そして、本日ついに完成した。これなら、小川先生に四月に見ていただいても、 「こりゃ駄目だ!」と一言のもとにはねつけられることもたぶんないだろう。
MTモデルを手書きへ
それにしても、この半年間、マイツールには本当にお世話になった。マイツー ルは、このような開発のときには本当に強力な助っ人だ。
SIMドンというが、本当はRUNドンで使う。そのほうが、叩きやすいから だ。そして、下斗米簡直くんの好きな「¥」と「@」の組み合わせが最高だ。
私は、初めのうちこそ、SIMドン、RUNドンでシステムを開発しているが、 本当はいずれ、このモデルの論理を手書きに移し、誰もがMGの中で、すいすい と資金STRACを「手で」計算してもらいたい。
すなわち、マイツールでも動くが、手書きでもすいすいと出来る。こうやって、 誰でもが、キャッシュフローの何たるかを手先から学び、それを自社経営に応用 してもらいたい。
そのためには、計算の流れ手順が肝要だ。何回も、MLにつぐMLを繰り返し、 ILSで行を増やし、CPSでページを最大限にして、そのたびにRUNドンや 手書きを繰り返す。
いろんな改良改善版が出来るたびに、ページを変えて録音する。このように前 のバージョンを全部保存するという離れ業は、ポケコンなどでは出来ない芸当で ある。
また、マイツールのRUNドンは、意外と「ハイ、ダメ~!」を出すことが少 なく、快適なうちに開発をどんどん進めることが出来た。
今日は良い日だ。外は雨天だが、CDからは、ELISE(エリーズ)の澄ん だタヒチアンソングが流れてくる。
それでは、四月以降、キャッシュフロー入りのMGで、リコモン経営(知的経 営)を展開して下さい。
(KK西研究所・所長 西 順一郎)