宇部空港に降りる
二月の半ばのことだった。山陰のM刃物のM社長から、山陽・宇部市のとある企業(社員数260人)で「MG研修を社内研修にご希望とのことですので、よろしくお願いいたします」とのご紹介メールが送られてきた。私にとって、毎月全国各地でのMGは日常茶飯事だが、このように企業からの依頼は最近珍しい。張り切ってお電話をすると、来月にも幹部級二卓12名をお願いしたいとのこと。早速日取りを擦りあわせたところ、当方があまり望ましくないとした3/23-24しか向こうとしては受け入れられないと言う。その日はちょうど当社のMG担当幹事の金子さんが、ご家庭の都合で出張できないというのだが、先方の指定とあれば仕方がない。宇部の近くのMG企業から二人ほど「助手」にきていただき、当日を迎えた。
見学者は要らない
ところで、先方が言われるには、正式メンバーは二卓12人だが、そのほかに数名のオブザーバーが脇にいてもいいかと言うのである。それはあまり良くない。
MGは、やって初めてそのドキドキ感やワクワク感、はらはら感が実感できるので、参加せずに脇から第三者的に見ているだけと言うのは、理解してもらえないし、正当な評価も出来ないだろう。そこで私が提案したのは、オブザーバー用にもう一卓余計に送るから、一緒に中に入っていただきたい。もし多忙なら、二日間まるまるいなくて、出たり入ったりしても構わないから、ともかく中に入って一緒に参加してくれ、と申し上げた。当日会場に行ってみると、正式メンバーが二卓12人フル、見学団がなんと一卓6人フル、計18人満タンでおられたのでびっくりした。正式メンバーは、生産・販売・技術・管理の部長・副部長クラス。見学団が社長・常務兼販売本部長・生産本部長・技術部長・事務局のカイゼン担当と教育担当。
ちょっと困ったのは、当方からお願いしたアシスタント二人が、満杯のため中にメンバーとして入れないということだ。MGはほとんどの場合「先輩が後輩をリード」する。プレイしながら、審判もし、教師もするのである。
ところが、その二人が満杯のため中に入れないとなれば、仕方がない、外から審判をするしかない。プレイするのは完全に素人のみ、全国で毎月やっている「玄人が素人をオンザジョッブで教えていく」ことが出来ないのだ。
企業文化が違います
しかし、あれは出来ないこれは出来ないと言わないのがMGインストラクションの流儀だ。とにかく、18人一律に看板を作ってもらって、第一期は始まった。
普通なら、なれた人となれない人を組み合わせるのだが、今回は全員素人だから、面倒だ、前の二卓は正式メンバー、後ろの一卓は社長や本部長、事務局らが座った態勢のままで始めた。最初に第一期2Hは経理の時間。専門の管理部長を除き経理は部外者ばかり。
マトリックス会計のとき、「はい、ワルツをやります。まず下→横→中。下から斜め45度」と言ったら、技術関係の方が「45度じゃないじゃないか」という顔をしているのには驚いた。また、右左会計で転がし計算をするときに、「はい、日本地図ですよ。小笠原から一本目の矢印が九州の宮崎に、、」と言う調子で教えるのだが、後である人の感想文を見たら、「先生の講義はとっぴなたとえが多い(たとえば、日本地図の宮崎県・・・)ので、何を言っているのか、考えているうちに眠くもならず、取り組むことができました。」と書いてあった。
企業文化に相当の開きがあるようだ。西式はけっこうソニー式だから、まじめというより、機知機略で教えていく。だから、日ごろ文部省的に考えていると付いて来れない。
「基礎といっても、基にして『粗』なるが大事」と昼食のときに社員食堂で私に話してくれたのは、第一開発部の俊才・島田聡課長だった。
さすが、Yさん!
利益感度分析は、中国でと同じように、この会社でも全員に大きなショックを与えた。今回、社長と一緒になってMGを当社に招いてくれたY本部長の感想文を見てみよう。「●今度、MGを開催するに当たり、社長に以前受けたMGの話をしたところ、ぜひとも実施したいとの言葉で、今回の運びになりました。このゲームは、会社の経営そのものだとの印象を持っています。
売価・原価・数量・固定費・利益、それにタイミングなど、いずれも総合的バランスを要求されるゲームではないかと思います。
特に私ども生産関係に従事している場合、経理的な考えに乏しく、今回の講義は大変勉強になりました。
●経理的な講義も、数字を挙げての説明だけでなく、具体的な表現で、印象に残る内容でした。
また、現在の経理的考えも、歴史を説明されることで、納得のいくものでした。
●今回丁寧な指導を受けましたが、まだまだ納得のいくところまで行っていません。また機会があれば、ぜひお願いしたいと思います。市場も厳しい中、今回のMGを生かし頑張りたいと思います。本日は本当にありがとうございました。」
(KK西研究所・所長 西 順一郎)
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